もやもや日記

iQOS(アイコス)、禁煙、医学部、ラジオについて気になったことを書いていきます。

iQOS(アイコス)の発がん性と受動喫煙に対する考え方

SPONSORED LINK

 

SPONSORED LINK

 

たばこの害としては、心筋梗塞や脳卒中、COPDなど色々ありますが、最初に思いつくのははやり癌ですよね。

今日はたばこ、そしてiQOSに関する発がん性について考えたいと思います。

 

発がん性に対する基本的な考え方

iQOSの発がん性を知るためには、発がん性を含めた毒性に関する概念を知る必要があります。

 

まず、大前提として、たとえ1つの細胞のDNAに傷が入ったとしても、癌化する可能性はあります。

下の図のように、傷が入った細胞が癌化して、それが増殖することによって腫瘍を形成するからです。

 

f:id:moyamoya0701:20161007172724p:plain

内閣府食品安全委員会資料より引用(一部改変)

 

そして、たばこの煙は、発がん性物質を含んでおり、これは少しの喫煙でも(そしてそれにともなって発生する副流煙でも)がんになる可能性があるということを示しています。

もちろん、iQOSのように従来の紙たばこよりも、有害性化学物質が少ない製品もあるかもしれませんが、それでも発がん性物質を含んでいることには変わりありません。

 

有害性化学物質が少しなら大丈夫?

化学物質には原則、一日摂取許容量(ADI)というものが設定されています。

 

人が一生涯にわたり毎日摂取しても健康上悪影響がないと推定される化学物質の最大摂取量をいいます。化学物質の生体影響の強さの指標であり、通常、体重1 kg当たりの化学物質摂取量で表します(mg/kg体重/日)。 ADIは、農産物・食品の生産、製造、加工過程において意図的に使用される物質(農薬、添加物など)の場合に用いられます。 ADIは、動物実験において安全性が確認された最大量(最大無作用量)から算出されます。動物実験の結果であることを考えて、ヒトは化学物質に対する感受性が動物の10倍強いと仮定し、さらに個人差が10倍あるとして、それらをかけ合わせた「100」で最大無作用量を割って算出する方法が多く用いられています。

農林水産省

 

この基準は残留農薬の基準値などに用いられ、残留農薬がこの基準値よりも低い値であれば、理論上、健康に問題ないということになります。

では、たばこ(もしくはたばこの煙に含まれる有害物質)についても、同じようにADIのように、1日●本までなら癌にならない、というような形で上限が設定されているでしょうか?

答えはもちろんNO.ですよね。

 

その理由は、発がん性に対する基本的な考え方で述べた通り、がんは、1つの細胞のDNAが傷ついただけでも、発生する可能性があるからです。

したがって、DNAを傷つける可能性のある、発がん性がある物質は、少しでも摂取すれば健康に悪影響をもたらす(がんになる)可能性があるため、ADIを設定することができません。

f:id:moyamoya0701:20161007165320p:plain

内閣府食品安全委員会資料より引用

 

これらのことをまとめると、①ADIが設定できる化学物質と、②DNAに傷を与えるたばこの煙のような発がん性物質は、次のようなグラフで表すことができます。

f:id:moyamoya0701:20161007124353p:plain

厚生労働省より引用

 

左のグラフが①ADIが設定できる化学物質で、横軸の用量が一定数を超えるまで、縦軸の反応(化学物質摂取による有害事象)が起きていません。

閾値があるという表現になっていますが、ADIがまさに閾値であり、それ以上摂取すると有害事象が発生するということを意味しています。

一方で右のグラフは、DNAに傷を与えるたばこの煙のような発がん性物質で、最初から用量が少ない状態でも反応(たばこによる発がん)が出ていることがわかります。

これを閾値がないと表現しています。

 

僕たちは発がん性物質にさらされて生きている

じゃあ、発がん性のあるものを摂取したら、即、癌になるのかといったら、もちろんそういうわけではないことは経験的にわかっていますよね。

 

遺伝毒性試験概要 | 国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 変異遺伝部

 

最近,DNA損傷性遺伝毒性物質に関しても閾値の存在が議論されている.これは,極低用量域ではDNA修復,代謝反応,スカベンジャーなどの生物学的防御機構が効率的に働き,突然変異の誘発を実質ゼロに抑えることができるという説による.しかしながら,試験結果にこのような生物学的防御機構を評価する手法が開発されていないため,リスク評価には反映できていない.

遺伝毒性物質の閾値を証明し,ゼロリスクを求めるのではなく,「たとえ遺伝毒性物質であってもその暴露量が充分に低ければ,その発がん可能性は極めて低く,その程度が社会的に許容できるリスクレベルであれば実質的に安全と見なし得る」とのリスク評価/管理の方法もある.この量を実質安全性量(Virtually Safety Dose: VSD)といい,その許容できるリスクレベルとして十万分の1~百万分の1(10-5~10-6)が採用されている(文献7)

 

これは、体内にDNAを修復する防御機構がそなわっていて、DNAの傷の程度(つまり発がん性物質の摂取量)が小さければ、DNAの傷を修復することができます。

このDNAの修復機構により、DNAの傷を治せる範囲の発がん性物質の摂取量を、実質安全性量と呼びます。

つまり、たばこの煙のような発がん性物質でも、この実質安全性量以下であれば、がんにならないかもしれない、ということになります。

 

実質安全性量はどの程度か?

上の引用中では、十万分の1~百万分の1(10-5~10-6)と記されていますね。

そこで、iQOSです。

iQOSは従来の紙タバコの有害物質を90%カットでしたよね。

つまり、1/10なわけです。

 

moyamoya0701.hatenablog.com

 

細かい計算方法は環境省のHPに掲載されています。

 

f:id:moyamoya0701:20161007181705p:plain

 

環境中たばこ煙(ETS)曝露削減政策によれば、

 

そしてETSに関しては、安全な曝露レベルに関する確証が得られておらず、1人の喫煙者がいる家庭において、一生涯ETSに曝露した場合、それに関連する発がんのユニットリスク(UR)は、約1 × 10-3(μg/m3)-1であると報告しています。これはつまり、約1μg/m3のETSに一生涯曝露した場合、発がんリスクが1,000人のうち1人であることを意味しています。

 

であるため、実質安全性量である十万分の1~百万分の1(10-5~10-6)にするためには、たばこの有害物質を少なくとも1/100にする必要があります(なお、ETSは環境たばこ煙のこと)。

しかしながら、iQOSは有害物質を1/10しか減らしていないため、iQOSの蒸気が実質安全性量程度の有害物質であると言うためには、紙タバコの有害物質を少なくとも99%カットするまで減らす必要があります(しかも代謝物が発がん性をもつニコチンは従来の紙たばことほぼ同量含んでいます)。

したがって、iQOSは発がん性のリスク低減には一役買っていますが、実質安全性量を満たすためにはまだまだのようです。

(ただし、この計算は喫煙本数や換気条件などを考慮していないことから、あくまでも参考の値となります)

 

iQOS(アイコス)の受動喫煙

結局、iQOSは有害性は少なくなっているものの、実質、発がん性がないといえるレベルまでは到達していないということがわかりました。

したがって、iQOSであったとしても、公共の場では従来のタバコのように運用していったほうがいいというのが僕の主張です。

上の計算では、一生涯たばこの煙に暴露した例であるため、実際公共の場で少しアイコスの煙に暴露したからといっても、ほとんど影響はないように思いますが、人によって感受性は違いますしね。

確かにiQOSユーザーにとって、煙臭い喫煙所にいくのは、あまり気が進みませんが、発がん性が少しでもある以上は従来通りの運用をしていく必要があると思います。

 

ただし、これはあくまでも理論上の計算であって、結局はいまフィリップモリスが進めているアイコスの臨床試験の経過を10年以上追わないと、iQOSの害というものはなんとも言えません。