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もやもや日記

iQOS(アイコス)、禁煙、医学部、ラジオについて気になったことを書いていきます。

朝日新聞のアトピー性皮膚炎にワセリンが効くというニュースを見て

ニュース

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研究者としては、ニュースにされるのはうれしいかもしれないけれども、こんな感じでニュースにされたら泣きたくなりますね。

 

www.asahi.com

 

保湿剤のワセリンをあらかじめ皮膚に塗ることで、アトピー性皮膚炎の発症を予防できる可能性があるとする論文を理化学研究所などのグループがまとめた。マウスによる実験だが、人でも似たしくみがある可能性があり、研究チームは「アトピー性皮膚炎になりやすいことが発症前にわかれば、予防につながるかもしれない」としている。

 理化学研究所研究嘱託の吉田尚弘医師らのグループが、25日付の米科学誌(電子版)に発表した。

 アトピー性皮膚炎を発症しやすくしたマウスを使い、発症の経過を調べた。生後8~12週で発症。その前から皮膚の角質がはがれやすくなるなど、皮膚を保湿し保護する機能が低下していることがわかった。

 一方で、発症前の生後4週から1日おきに、このマウスで一番最初に症状が出やすい耳の部分にワセリンを塗り続けたところ、保護機能が改善。炎症を起こす細胞が皮膚に集まるのを防ぎ、長期にわたって発症しなかったという。(竹石涼子)

 

そもそも、アトピー性皮膚炎で保湿が重要なことぐらいわかってた

アトピー性皮膚炎では保湿が重要なことは、患者さんや皮膚科医だけでなく、他科のドクターや一般の方も知っている人は知っているかと思います。

実際に、日本皮膚科学会が出しているアトピー性皮膚炎のガイドラインには推奨度Aと最もエビデンスレベルの高い治療法として掲載されています。

 

4.皮膚バリア機能の異常に対する外用療法・スキンケア
 アトピー性皮膚炎では角層の水分含有量が低下して皮膚が乾燥し,皮膚バリア機能の低下をきたしている7).角層を中心としたこの表皮の生理学的異常によって,皮膚は非特異的刺激による炎症や痒みが生じやすくなるとともに,種々のアレルゲンの侵入が容易になり経皮感作やアレルギー炎症を惹起しやすいと考えられている.乾燥した皮膚への保湿外用薬(保湿剤・保護剤)の使用は,低下した角層水分量を改善し,皮膚バリア機能を回復させ,皮膚炎の再燃予防と痒みの抑制につながる(CQ9:推奨度 1,エビデンスレベル:A)75)76).また,抗炎症作用のある外用薬などの治療で皮膚炎が寛解した後にも,保湿外用薬を継続して使用することは,寛解状態の維持に有効である77)78).保湿外用薬による維持療法中に皮膚炎の再燃がみられた部位には,炎症の程度に応じてステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などを使用し,炎症の早期の鎮静化および維持療法へと回帰することを目指す.一方で,保湿外用薬の副作用としての接触皮膚炎の発生には注意が必要であり,アトピー性皮膚炎の再燃との鑑別は重要である

 

じゃあなんでニュースに取り上げられたのか?

今回は、アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子が解明されたという、もっとミクロな視点での発見ということで、理化学研究所が報告しているわけですよね。 

 

アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子を解明 | 理化学研究所

 

理化学研究所(理研)統合生命医科学研究センター疾患遺伝研究チームの吉田尚弘チームリーダー(研究当時)、安田琢和研究員(研究当時)らの共同研究グループ※は、遺伝子変異誘導によりアトピー性皮膚炎モデルマウス(Spadeマウス)を開発し、このモデルマウスにおけるアトピー性皮膚炎発症のメカニズムを解明し、発症の予防方法を発見しました。

アトピー性皮膚炎は、日本を含めた先進国の乳幼児でよくみられる炎症性皮膚疾患であり、遺伝要因と環境要因の複合によって発症すると考えられています。共同研究グループは、遺伝要因を明らかにするため、マウスに「化学変異原」を投与し、その中から、かいたり擦ったりする掻破(そうは)行動の強い皮膚炎を発症するマウスを選別しました。このマウスは清潔な環境で飼育しても、生後8 ~10週間でアトピー性皮膚炎を発症します。病気の原因となる遺伝子変異を調べたところ、さまざまな細胞の増殖や分化に重要なサイトカイン[1]のシグナル伝達因子である「JAK1」分子の遺伝子配列に点突然変異[2]が生じ、JAK1のリン酸化酵素であるキナーゼ活性が増加していることを突き止めました。これにより、発症前から表皮細胞の古い角質が剥がれるときに発現するプロテアーゼ(ペプチドの加水分解酵素)群の遺伝子発現が上昇し、角質による皮膚バリア[3]に機能障害が起こっていることも分かりました。

このマウスの皮膚にJAK阻害因子を塗ったところ、プロテアーゼの発現は抑制され、アトピー性皮膚炎の発症を遅らせることができました。軟膏基質として使われるワセリンを塗ることでも、発症の予防ができました。このとき、皮膚バリア機能も正常と同等に保たれるだけでなく、真皮(表皮の下にある線維性結合組織)の炎症発生も抑制されることが明らかとなりました。

共同研究グループでは、ヒトのアトピー性皮膚炎でも同じことが起こっているのかどうかを調べるために、アトピー性皮膚炎の患者の皮膚組織を調べたところ、6例中4例の表皮細胞でJAK1が活性化していることを発見しました。

ヒトにおいてアトピー性皮膚炎患者は、発症後にならないと診断がつきませんが、未発症の皮膚でJAK1を含む信号伝達経路の活性化が起こっている場合、アトピー性皮膚炎を発症する可能性のあること、ワセリンを塗ることで発症が予防できる可能性が示されました。また、今回作製したSpadeマウスを用いることによって、アトピー性皮膚炎発症に関わる複数の要因を分子レベル、細胞レベルで明らかにし、それぞれのターゲットを決めた発症予防法や治療法の確立が期待できます。

本研究は米国の科学雑誌『Journal of Clinical Investigation』に掲載されるのに先立ち、オンライン版(4月25日付:日本時間4月26日)に掲載されます。

 

今まではワセリンの有効性、つまりアトピー性皮膚炎の保湿の効果について、分子レベルでのメカニズムがわかっていなかったのですが、今回の報告ではそれが明らかとなるような知見が得られた、というのが報告の核心かと思います。

それをアトピー性皮膚炎にワセリンが効くという、一般的な知見に落とし込まれると、苦労して研究された方も泣きたくなるかもしれません。

 

そもそも、ワセリンが効くってことがわかっていたらそんなこと調べなくてもいいと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、今回のような分子レベルでのメカニズムの解明により、新薬のとっかかりになるなど新しい治療が生まれるブレイクスルーの可能性もあるわけなので、論文になったのだと思います。