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もやもや日記

iQOS(アイコス)、禁煙、医学部、ラジオについて気になったことを書いていきます。

緑色に光るサル GFPトランスジェニック動物の研究応用について

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寝ようと思ったのですが、はてなブックマークでこんな記事が注目されていたので、少しだけ書こうと思います。

 

this.kiji.is

 

緑色蛍光タンパク質(GFP)を作り出す遺伝子を組み込んで、緑色に光るカニクイザルを誕生させることに、滋賀医科大と実験動物中央研究所(川崎市)のチームが成功し、英科学誌電子版に25日発表した。紫外線などを当てるとサルの皮膚が緑色に発光する。

 チームは、マウスやラットより人に近い実験動物であるカニクイザルの遺伝子を改変する研究を進めてきた。サルの卵子にGFPの遺伝子を組み込んだ後、精子と受精させると、生まれたサルは全身にGFP遺伝子が分布していた。

 病気の原因遺伝子などと一緒に組み込めば、さまざまな病気のメカニズム解明や治療法の開発に役立つという。

 

そもそもGFPって何?

 

GFPは一言でいうと、緑色に光るタンパク質で、この研究では2008年にノーベル化学賞を日本人の方が受賞しています(下記はウィキペディアから引用)。

 

緑色蛍光タンパク質(りょくしょくけいこうタンパクしつ、Green Fluorescent Protein, GFP)はオワンクラゲ (Aequorea victoria) がもつ分子量約27 kDaの蛍光タンパク質。1960年代に下村脩によってイクオリンとともに発見・分離精製された[1]。下村はこの発見で、2008年にノーベル化学賞を受賞した[2]。

 

何がすごいって、細胞内に発現させたいタンパク質の遺伝子に、GFPの遺伝子を融合させると、細胞内でタンパク質が発現しているかどうかを、光っているかどうかで判断できるという優れモノです。

GFPは生命科学の分野で、画期的な方法でなくてはならない手法となっています。

ただ、そうはいっても、GFPを使った研究をしていないとなかなかピンとこないと思うので、実際にどのように臨床応用がされているのかを紹介します。

 

光る動物たちとその研究への応用

細胞レベルでは比較的簡単にGFPを導入することができますが、個体レベルになるとGFPを導入するには受精卵やES細胞のレベルで遺伝子を導入する必要があるため、テクニックと手間が必要になります。

ただ、今ではマウスでGFPを導入したトランスジェニックマウスの作成はすでに成功していますし、研究応用がなされています。

 

GFPマウス | 医薬基盤・健康・栄養研 実験動物研究資源バンク

 

これがどのように実際に研究に応用されているかというと、例えばこんな研究がありますね。

 

トランスジェニックマウスを作製するため前立腺幹細胞特異抗原(Prostate StemCell Antigen ; PSCA)遺伝子のプロモーターを用いた.PSCA はヒトにおいて前立腺に主に発現し,ヒト正常前立腺においては未分化細胞が存在すると考えられている基底層に特異的に発現している.PSCA のプロモーターにより,簡便に検出できる GFPレポーター分子を発現させる PSCA―GFP トランスジェニックマウスにおいて,GFPは主に前立腺で発現していた.前立腺における GFP の発現パターンは細胞増殖活性が最も高い腺管の末端に限定されていた.GFP の発現は発生中の(5 週齢)前立腺においてはより広い領域に見出され,成熟した(14 週齢)前立腺においてはより末端領域に限定されていた

 

僕も専門ではないので詳しい話はわかりませんが、やっていることとしては、

 

未知の機能の遺伝子+GFPの遺伝子をマウスの受精卵に導入して、光るマウスを作ることにより、未知の機能のタンパク質の局在(つまりどの器官や組織にいるか)を、緑色の光で判断することができる

 

ということだと思います。

今回のサルの研究では、全ての器官が緑色に光っているようですが、これは全ての細胞に存在するタンパク質の遺伝子にGFPを組み込んでいるからだと思われます(元の論文を探しましたが、Pubmedにも引っかからなかったので、詳細は不明です)。

 

霊長類でトランスジェニック動物ができたというインパクト

医学分野の研究では、最終的には人での臨床応用が課題となります。

したがって、マウスの細胞の研究よりもヒトの細胞の研究の方が評価はされやすいし、マウスの細胞レベルの研究よりもマウスの個体レベルの研究の方が評価されやすいです。

マウスは生命科学分野でよく使われているモデル動物ですが、代謝経路に代表されるように、やはりヒトと異なる事情もあるようで、マウスよりも霊長類での研究が評価されるのは、自然の流れでしょう(実際に、マウスにはめちゃくちゃよく効く薬が、人では全く効かないなんて話はザラにあるようです)。

霊長類でのトランスジェニック動物に対する研究者のコメントがこちらに掲載されています。

 

www.natureasia.com

 

佐々木氏: 人工的に遺伝子を改変したマウス(トランスジェニックマウス)は、生命科学研究に広く使われており、特に医療や保健への応用を目的とした医学分野での期待が大きくなっています。ところが一方で、同じ脊椎動物とはいえ、マウスとヒトとでは遺伝子やその機能に大きな違いがみられる場合もあり、最近になって、そういった点が重大視されるようになりました。例えば、医薬品の有効性や安全性について、マウスでの実験結果をそのままヒトに適用すると、重い副作用を引き起こしかねないといった例があるのです。

もちろんトランスジェニックマウスによる実験は必須ですが、ヒトへの応用を考えた場合には、よりヒトに近い霊長類での「もう一歩踏み込んだ研究」が必要だと考えました。同じように考える研究者はほかにもおり、これまでにアカゲザルやカニクイザルなどのマカクのトランスジェニックが作られる例はありました。しかし、その成功率は低く、実用化に結びつく研究とはいえませんでした。

 

GFPのトランスジェニック動物ができたということは、特定の遺伝子の機能を消失させるノックアウト動物の作成も今後なくはないですよね(GFP遺伝子を組み込むよりもハードルは高いですが)。

例えば、機能がいまいちわかっていない遺伝子をノックアウトさせた受精卵を作成して、それを育てれば、その遺伝子が機能しない個体を作り出すことができるということになります。

その個体を解析することによって、その遺伝子の機能の解明、さらには疾患とのつながりや治療への足掛かりになる可能性だってあります。

事実、すでに様々な遺伝子のノックアウトマウスが作成され、それにより多くの知見が明らかとなっています。

今回の研究で、従来よりも簡便な方法で霊長類のトランスジェニック動物ができているのであれば、記事の締めにもあるように、「さまざまな病気のメカニズム解明や治療法の開発に役立つ」というのもあながち間違いではないでしょう。

 

倫理的な批判

はてなブックマークのコメントでは、倫理的な批判も見受けられました。

それに対し、先ほどの記事の研究者は次のように反論しています。

 

私たちの論文に対するメディアの反響は大きく、ワシントンポストやBBCなどが、動物愛護と生命倫理の観点から大きく取り上げました。例えば「優秀な遺伝子をもつデザイナーズ・ベイビーなど、ヒトに応用される懸念がある」、「病気になるとわかっている非ヒト霊長類を人工的に作るのは、いかがなものか」といった議論が行われたようです。

ヒトに近い非ヒト霊長類を実験動物にするのはかわいそうだという一般市民の気もちはわかりますが、「だから使わない」と言い切れるのでしょうか。これは非常に難しい問題です。実際、パーキンソン病や ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの難病に苦しんでいる患者さんがおり、「マウスの実験では不十分だが、非ヒト霊長類を使えば新たな治療が見つかるかもしれない」という場合には、代償を払う価値はあると思います。もちろん、いろいろな立場の人々によって議論がなされたうえで研究が行われるべきですが。

 

確かに、霊長類を実験動物にするということは、議論すべき倫理的問題ではあるとは思いますが、ただ単に「緑色に光るサルを作りましたすごいでしょ」と言いたいだけではないということだけはご理解いただきたいと思い、この記事を書いた次第です。

科学の発展をとるか、動物愛護をとるか、それは倫理の問題ですので、どちらが正しいということにはならないと思います。

ただ、動物がかわいそうという意見の方も、科学の発展という側面もあるということを知ってもらえると、また別の見方も出てくるのではないでしょうか。

(ネタにマジレスしてたらすいません)

 

今度こそ寝ます。おやすみなさい。